Fete day





「クリスマス、俺のうち来ない?ボス」

充はそう言って桐山を誘った。少し恥ずかしそうに。

「クリスマスは家のパーティーに出なければいけない」

桐山は素っ気無く言い放った。

「そっか、じゃあ仕方無いか...」

しょんぼりした様に充はそう言って俯いた。



桐山はそんな充を見て、少し何かを考える様にしてから、

静かな声で言った。

「イブなら、空いているよ」



二十四日。

桐山と充は、二人で居た。

暖房の無い充の部屋。

ストーブを点けてもなかなか温まらない。

「ボス、寒い?平気?」

「ああ」

少し申し訳無さそうに訊く充に、桐山は顔を上げすに答えた。

桐山の視線は充が買って来たショートケーキに注がれている。

大して高いものは用意出来なかったのだが、桐山が食べているとそれも最高級料理の様に見えてしまうのだから不思議だ。

―ボス、気に入ってくれたみたいだ。よかった...。

何だかとても嬉しい気持ちになりながら充はケーキを口に運んだ。

そう言えば、ボスとクリスマス一緒に居るのって初めてだよな...。

桐山の方に視線を移した。

桐山と目が合った。

「充」

「え?」

黙々とケーキを食べていた桐山が、フォークを皿の上に置き、身を乗り出してきた。

その澄んだ瞳で真っ直ぐ充を見つめたまま。

「何...ボス...って、あ...っ...」

桐山の美しい顔が、充の間近に迫った。

唇のすぐ横辺りを温かい感触が這う。



何が起きたのか理解出来ていない充の顔から離れ、桐山が悪びれる事無く言った。

「クリームがついていた」

そう言って桐山は舌なめずりし、自分の唇にほんの僅かに残っていたクリームを拭いとった。

「あ...ありがと...」

充は顔を紅くしながら言った。

充の心臓は高鳴っていた。

時々、凄え大胆な事するよな、ボス...。



今夜は自分に歯止めをかけられそうにない。

充は複雑な思いで、再びケーキを食べ始めた桐山を眺めていた。



夜はあっという間にやって来た。



「ボス、電気消すよ」

「ああ」

桐山が布団にくるまっているのを確認して、充が証明を落とす。

―まさか、これで終わりって訳じゃないよな?ボス。

少し不安を感じながら、充は自分の隣に居る桐山を見た。

豆電球だけの、薄暗い部屋の中、

桐山は目を開けていた。

ほっとした。



「ボス」

「どうした?充」



充は背中越しに桐山を抱きしめていた。



「寒くて眠れないから...こうしてていい?」

「構わないよ」

桐山は特に動じた様子も無く言った。



充はじれったい気持ちになった。

誘ってんだよ?俺...。



振り向いている桐山の顔を見た。

相変らず無表情だった。



いいよ、それなら...。



充は右手をすっと桐山の下半身へと伸ばした。

「ん...っ...」

無表情だった桐山がほんの僅かに眉を顰める。

充の手が桐山の下腹部を這い、薄い茂みを這い、やがて秘部へと辿り着く。

冷えた充の手を温める位にそこは熱く、堅くなっていた。

何だ、やる気ない振りして、ボスも...。

少し嬉しい気持ちになりながら充は手を動かす。

指を濡らす感触がした。

「ふ...っう...」

桐山の、僅かに上気した顔を見ながら、充は桐山のそれを扱いた。

時折尖端にも刺激を加えてやる。

桐山の手が充の背中に回った。

ぎゅっと力が篭められた。



「ボス」

充は桐山のものを愛撫する手を止めた。

突然絶たれた快感に、恍惚と目を閉じていた桐山が少し驚いた様に瞬きをして充を見た。

充はちょっと意地悪そうに、そんな桐山に訊く。

「いい?...このまましても...」

「そのつもりだったんじゃないのか?」

桐山は少しも動じた様子無くそう言った。

ただ、僅かに息を乱しながら。





充は桐山のものを口で愛撫していた。

滲み出してくる雫を何度も舌ですくっては舐め上げる。

「...っふ...っう...ん...」

桐山は自分の下腹部に顔を埋めている充の髪を撫でながら、小さく声を洩らした。

時折充の頭を撫でる手にぐっと力が篭もる。

「充...」

その声は縋る様にも聴こえた。

「ボス...もう入れて欲しい?それともこのまま一回出す?」

顔を上げて、充は桐山に尋ねた。

「...充は...どうしたいんだ」

達せそうで達せない今の状態が辛いのか、桐山は少し眉を顰めていた。

充は微笑して、

「早く入れたいけど...ボス、今のままじゃ苦しいだろ?だから一回出していいよ」

そう言うと、充は桐山のそこに再び顔を埋めた。

いくらか激しくそこに刺激を与える。

「ふ...う...んんっ...!」

一際感極まった様な声を上げて、桐山がぎゅっと充の頭を抱きしめた。



充は桐山が出したものを一滴残さず、喉に絡めて飲み込んだ。





桐山の呼吸が整ったのを見計らい、充は桐山の下肢を押し開いて、自分の熱くなっているものを、秘部に押し当てた。

ほんの少し指で馴らしただけで、そこは柔らかく熱くなった。

もう桐山のそこは充を受け入れる事に何の抵抗も無い様だった。

桐山が充を見上げた。

心なしか、充にはその顔が催促している様にも見えた。

「ボス、行くよ...」

桐山が頷くと、充はゆっくりと腰を進めた。

すぐに動きたいとはやる気持ちを押さえながら。

「ん...」

根元まで充を受け入れると、桐山はぎゅっと充の背中にしがみついた。

その感触が心地良かった。

いつもなら人を寄せ付けない雰囲気を持つ桐山が、この時ばかりは自分に全てを委ねてくれている様で、充は嬉しかった。

「充...動かないのか」

「もう大丈夫なの?ボス」

少し熱に浮かされた様な目でこちらを見てそう言った桐山に、充は優しく訊く。

桐山は頷いた。

充はそんな桐山に、そっと口付けた。

ほんのり甘い気がした。

もちろん気のせいだったのだろうが。



「ボス...ボス...っ...」

「...っふ...充...」

最初こそゆっくりと動いていた充だが、次第に抑制が利かなくなっていくのはいつもの事。

「ボス...気持ちいい...よ...っ...ボスは...っ...?」

強い快感に、途切れ途切れの声になりながら、それでも充は桐山を気遣うのを忘れなかった。

「ん...ん...俺...も...」

桐山は気持ちいいよ、とは言わなかったが、もう最初の頃の様に何でも「悪くない」で済ますような事はなくなって来ていた。

充は腰の動きを早めた。

「ボス...俺...俺もう...っ...」

充は少し気を抜けばすぐに達してしまいそうなのを何とか堪えながら、桐山のそこに手をやった。

「んん...っ...」

滴るほどに濡れた桐山自身を強く扱き立てる。

さっき射精したばかりとは思えない程、そこは張り詰めていた。

目の前の桐山が眉を顰める。

二箇所を同時に攻められているのはさすがに辛いのだろうか。

手に力を篭めた。

先に桐山を開放してやる様に、幾分激しく。

「んっ...んん...っああ...っ!」

桐山が白い喉を反らした。

達した様だった。

指を濡らす感触がした。

それを感じると、充は激しく腰を打ちつけ、漸く自分も熱を解き放った。



「なんか俺、ボスにクリスマスプレゼント貰った気分だよ」

「そうか?」

後始末を済ませ、布団の中で桐山を抱きしめながら、充は嬉しそうに言った。

実は桐山へのクリスマスプレゼントは用意していたのだが。

それは明日の朝渡そうと思って居た。

朝早く、桐山が家に帰ってしまう時に。

「今度は、ボスの誕生日に何かやりたいな。誕生日いつなの?ボス」

充にそう訊かれると、桐山は少し目を伏せて、言った。

「俺の誕生日は、今日だよ」

「えっ!?」

充は驚きのあまり声を上げた。

まさか、そんな事考えた事も無かった。

桐山が、クリスマスイブに生まれただなんて。

「どうしよう...俺...プレゼントひとつしか...」

思わずそう言って、充ははっとした。

まだ秘密だったのに。

「プレゼント...?」

少し怪訝そうな顔をして、桐山が充に訊く。

充は仕方ない、と諦め、桐山の顔を見て、言った。

「ボスにクリスマスのプレゼント、買ってたんだけどさ、明日渡そうと思ってたんだ。だけどボスが今日誕生日なの知らなくて...」

充は少し悲しそうに言った。

「プレゼント、ひとつだけなんだ」



桐山はそんな充を、不思議そうな顔をして、見ていた。

少ししてから、言った。

「充」

充は顔を上げて、はっとした。

桐山の無表情の顔が、何故か酷く穏やかなものに見えたのだ。



「さっきので、構わないんじゃないか」

「え?」

「さっきした事が、プレゼントで構わない」

淡々とそう言った桐山。



充は見る見る顔を紅くした。



思わず、言った。

「あ、あんなのでよかったの?だって...。」

ボスだけじゃなくて俺が嬉しい、あんなプレゼントだったら。

何だか凄く申し訳ない気持ちになった。

桐山が家に来る楽しみのひとつとして、先程の行為を考えていた自分が情けない。

桐山は、そんな充を暫く不思議そうに眺めていたが、やがて思いついた様に充の腕をすりぬけて、身体を下にずらして云った。

驚く充に、桐山はぽつりと言った。

恥らう事無く。

「ではもう一度すればいい」



「え!?」

思わず瞬きした充は、すぐに小さく声を洩らして、眉を顰めた。

下半身を温かい感触が這った。

「あ...ボス...」

桐山は充の下腹部に顔を埋めていた。

先程、充が桐山にした様に。

射精したばかりのそこを愛撫されて、思わず身体を震わせる。

桐山の舌が這う感触に、蕩けそうな快感を覚えながら、

今夜は眠らせて貰えなさそうだな、と充はぼんやり考えた。



それはきっと、嬉しすぎるプレゼントだった。

充と桐山、両方にとって。



おわり

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