俺が欲しかったものは、みんな君が持っていた。
だから俺は君が隣に居るだけで、他には何も要らなかったのかもしれない。




あと、二人。

二人を殺せばこのゲームは終わる。
それなのに。

幾ら撃とうとしても引き金は引けなかった。

そして、目の前に居た筈の二人はどこにも居なかった。

探した。

どこに居るんだ?

何も見えなかった。

誰も居なかった。


終わらせなければ、いけない。

暗い場所を彷徨っていた。

終わらせなければいけないのに。

一体どこへ行ったんだ?


誰も居なかった。
終わらせなければ休む事はできない。

一体、いつになったら、俺は。






「もう、いいんだよ」
突然目を塞がれる感じがした。
俺は目を閉じた。

銃を握った俺の手を別の誰かの手が包み込んだ。
俺は引き金にかかった指の力を抜いた。

身体を誰かが抱きしめた。
俺は身体の力を抜いた。







「お疲れさま」
その声は、とても懐かしいものの様に思えた。
温かい誰かに、
俺は全てを委ねた。
「もう終わったんだよ、ボス」
温かい誰かの、温かい声が耳に響いた。


…終わった?
終わった、のか?


ああ、これでやっと。

やっと俺は休む事が出来るのだ。

俺を抱きしめている誰か。

「…充?」
ぎゅっと俺を抱きしめた。
誰かの、
…充の腕の中は温かかった。


「ひとりにしてごめんな…」

充の声は震えていた。

充の言葉は俺にとって理解し難いものだったが―、

何故かとても、温かいものに思えた。

充の腕の中も。
充の声も。

全てが温かかった。

思えばずっと、寒かったのかも知れない。

…いつから?

充が、俺の隣に居なくなった時から。


こうされるのは、随分と久し振りの様な感じがした。
充に、俺は全てを委ねた。





ようやく気付いた。

俺はずっと、ここに帰りたかったのだと。









終わり



後書き:桐山強化月間最後に。沼桐?意味不明。
桐山、突然撃たれたから、もしかすると自分が死んだって事気がつかないまま彷徨ってるって可能性もあるかなと思って書いてみました。
充を殺した事で桐山は制御装置を無くしちゃった、みたいなイメージあるので。
どうしていいかわからなくて彷徨ってた桐山を見かねた充が迎えに来てくれたらなという願望もこめて。なんかありがちな展開だけど(汗。
充はちゃんと桐山許してるんですよ。私の中では。
殺されて初めて、桐山の虚無的な部分に気がついてあげたみたいな。
充は優しい子だから、そう思ってくれてると信じたいです。
やっぱりひとりで死んじゃうのは悲しすぎるから。桐山。
桐山にも帰りたい場所があったって思いたいです。

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